Interview

『ファインダー』リリース記念 ノラ単独特別インタビュー!

2021年6月5日YouTube投稿の「ショウニントウソウ」から始まった「今夜、あの街から」が、10月21日にリリースとなった最新作「ファインダー」で第一章を終え、物語は第二章へ。

Z世代の憂いを独自の視点で描き出した「ノラ」と「レイラ」の物語は、セカンドステージへ移り、どう展開していくのか! これまでの総括、そして気になる今後について、ノラに話を聞いた。

取材・文 / 松原由香里(music freak magazine編集部)

構想は自分の中にある

10月にリリースした8th Digital Single「ファインダー(starring 珀)」で、「今夜、あの街から」(通称:ヨルマチ)の物語の第一章が終わりました。改めてこれまでの作品を振り返っていただけますか?

「今夜、あの街から」は、ノラとレイラという一組の男女が、「あの街」と呼ばれる街の中で色んな事に悩みながら、生きていく、戦っていくストーリーを楽曲で描いていくユニットです。
1st「ショウニントウソウ」で、『誰かに認めてほしい』という願いを抱いたノラとレイラが動き出し、2nd「キカセテクレ」と3rd「マリオネット」では、『今生きているこの物語(人生)の中で、自分たちは作者じゃなくて、読者なんじゃないだろうか? 人生はまるで出来上がった人形劇のようだ』という葛藤に苦しみます。
そこから二人は、『誰にも理解されない』とお互い別々の方向を向き始めたり迷い子のようになり(4th「ロストチャイルド」)、そして『今見えている景色や自分たちさえも、全てが偽物なんじゃないか』と疑うようになります(5th「イミテイション」)。
その後、迷い続けながらも前に進もうとする二人(6th「レジリエンス」)、そして『よし、ここから開き直っていくんだ!』と全て飲み込んだけれど、やっぱり満たされない二人を7th「クウフク」で描きました。
そうして、色々な悩みや感情と戦いながら進んできた二人が、やっと欲しかった答えを見つけるというのが、第一章のラストとなる8th「ファインダー」になっています。

8th「ファインダー」でついに答えを見つけて、第二章へと進んでいくんですね! 最初から1話〜8話までのストーリーを決めていたんですか?

最初からある程度のプロット(物語の骨組み)があってそれに沿って作ってはいますが、一話ごとの細かいストーリーに関しては曲が導いてくれるというか、できた曲が二人を動かしていくという感じになっています。
構想としてはこの先もなんとなくできていて、二人の行き着く先は自分の中にはあります。

8月のワンマンライブで配られたノラさん執筆の小説を読ませていただきました。あちらはライブ用に新たに書かれたものなんですか?

ノラ執筆小説「承認闘想」表紙
ノラ執筆小説「承認闘想」表紙

元々頭の中にある構想を箇条書きにしていたんです。ユニットを作った段階で、「ここでノラとレイラが出会う」とか、「ここで二人は街を出ていく」というようなチャートみたいものを作ってあったんですね。それを元に肉付けじゃないですけど、より細かく書いていったのはワンマンライブをすると決めてからです。

小説を書こうと思っても、あんなに完成度の高いものを簡単には書けないと思うのですが、昔から執筆はされていたんですか?

いや〜、元々活字ってあまり得意じゃなくて、実は本も全然読まないんですよ。そのくせに文学部に入っていたんですけどね(笑)。文学部って授業の中で小説を書く時間があって、その時は短編だったんですけど、それは最高評価の「S」をいただきました。でも、得意かと聞かれるとそうではなくて、一応授業ではやってました程度のスキルしかありません。

なぜ文学部を選んだんですか?

これが結構、謎なんですよ(笑)。本読むの好きじゃないし、文章書くのが得意なわけでもないんですけど、でも映画やアニメを観るのはめちゃくちゃ好きなんですけどね。まあ〜、改めて考えると一番大きかったのは作詞だと思います。作曲は高校生の時からDTMっぽいことはしていたんですよ。作品って言える程のものじゃないですけど、一応曲は作っていたんです。でも歌詞が書けなくて、いわゆるインスト音楽を作っていて、高校生の頃に悩んだ記憶があるんですよね。その頃から「音楽で食っていくぞ」って思っていたわけではないんですけど、「文学部に行ったら歌詞書けるようになるかも」みたいな意識は大学を決める時点であったかもしれないです。

音楽ルーツは明るい曲

作詞を始めたのは、何歳頃からなんですか?

本格的に始めたのは多分20歳なんですよ。先日24歳になったばかりなので、3年ちょっとくらい経ってますね。

最初の頃に書いていた歌詞は、どんな作品性でしたか?

実は僕の音楽ルーツって明るい曲が多くて、「今夜、あの街から」とは180度違うんです。なので、一番初めに書いた曲はめちゃくちゃ明るかったと思います(笑)

ちなみに、映画やアニメはどんな作品が好きですか?

そんなにすごいミーハーでもないんですけど、新海誠さんの作品はやっぱり好きですし、あと最近ディズニーにハマっていて、ディズニー作品は一通り観てます。

どういう所にハマったんですか?

ディズニーって基本的にハッピーエンドじゃないですか。どうなっても必ず最後は幸せになるんですよ。現実的じゃないのかもしれないけど、僕らがアニメーションとか物語に求めるものってそれなんじゃないかと思っていて、安心して観れる所が好きですね。いい意味で綺麗というか、キラキラしているじゃないですか。そういうファンタジーな感じが好きです。実はディズニーは小さい頃は通ってこなかったので、『最近になって初めてシンデレラを観た』みたいな感じなんですけど、今はすっかりお熱です(笑)

自分が書く作品も、最終的にはハッピーな方向にという傾向が強いのでしょうか?

そうですね。それこそヨルマチの物語もずっと暗い中で進んできたけど、メッセージ性だけは常に明るくいようという気持ちがあるので、自分の好きな物語のベースと、自分が作る作品性は通づる所があるのかもしれないですね。

閉塞感に対するドラマを描く

レイラ役には、これまで6名の女性アーティストを迎えてきましたが、今まで話していなかったエピソード、裏話等はありますか?

「レイラ」というキャラクター像がありながら、あえて似てる人を選んでいない、全く違うタイプの歌い手さん達に参加していただきました。それこそレイラはディズニーのヒロインみたいな強い女の子で、ノラ君を引っ張ってくれる存在なんです。でも実はすごく繊細な部分があってというキャラ設定をはっきり作っているのでついつい王道で選びがちですけど、そこをあえて外してきました。何故一人に固定しないかというと、音楽性の幅を狭めたくないからなんです。コラボレーションって自分だけじゃ作れない世界を作れるから面白いわけで、これは僕の中ですごく大事だったんですね。だったらある意味ちょっと邪道なレイラがいてもいいと思うんですよ。芯の部分だけちゃんとレイラであれば色んなレイラがいていいと思っているので、プロアマ問わず、当時の自分に刺さった声の方に、衝動のままにオファーさせていただきました。

ヨルマチ全配信SGジャケット
ヨルマチ全配信SGジャケット

コラボしてみて、大きな影響を受けた所はありましたか?

やっぱり歌唱に関しては相当歴代のレイラさんに影響を受けていると思います。8作品全て、僕が歌ったものに対してレイラさんに歌っていただいて、その歌に対してもう一度僕が歌い直すという工程を毎回踏んできているんですよ。「こういう歌い回しするんだ」とか、「力を張ってるこの部分、僕だったら逆にここは力を抜いて、その後を強調していたな」とか。歌い方の癖やテクニックみたいな部分は、レイラさんたちの影響を相当受けてきたなと感じています。それぞれにすごく勉強になりました。

「歌を歌いたいから自ら楽曲制作をする」という話を以前伺いましたが、実際プロとして活動する上で、ただ好きで作っていた頃とは違う難しさを感じることもありますか?

それは結構ありますね。自分は天才肌ではなくて、どちらかというとめちゃくちゃ分析して頭で作品を作るタイプだと思うんですよね。だから毎作すごく悩みます。8作品作り切ったので言ってしまうと、制作が苦しくなかったことはないです(笑)。「自分ができる表現」と「自分の理想の表現」との差には常に苦しんでいます。

ポテンシャルが高いからこそ、常に上を求めてしまうんじゃないですか?

ドMなんですよ、永遠に自分を苦しめている感じはありますね(笑)。でも、「今夜、あの街から」の作品でノラとレイラが成長しているのと同時に、僕自身もなんとなく成長できているのかなって感じはするので、1stから8thまで作品を追っていってもらうと、きっとそんな成長した部分も感じ取っていただけるのではないかなと思います。

「今夜、あの街から」の作品性で最も大切にしていることはなんですか? 例えば中毒性を持たせるとか?

ヨルマチはやっぱり「閉塞感」ですね。歌詞、サウンド、全てにおいてのテーマ、ユニット自体のコンセプトはこれに尽きます。閉塞感に対して、時に受け入れ、時に抗っていく、閉塞感に対するドラマを描いています。

「抗う(あらがう)=戦う」ということでしょうか?

そうですね。でもノラもレイラも武力で捩じ伏せるタイプではないので、それこそライブタイトルの「承認闘想」もそうでしたけど、思想で戦っていくユニットではあるんですよね。「抗う」って結構マイナスなイメージを受ける言葉じゃないですか。でも、確実にプラスな希望とか、こうありたいってプラスな要素がないと「抗う」って行動には発展しないと思うんですよ。だから前向きな意味での「抗う」という言葉がこのユニットのテーマ、多分そこだと思います。

ライブ「承認闘想」デジタルフライヤー
ライブ「承認闘想」デジタルフライヤー

「抗う」って結構な熱量が必要ですよね。マイナスな感情からはそれほどのエネルギーは湧いてこないですもんね。

そう!そういうことです。

新しい風を吹かせたい

「今夜、あの街から」の第二章はどんな風になっていきそうですか?

第一章でノラとレイラはそれぞれの探していた答えを一つ見つけるけれど、もっと大きい理想があるんですね。最終的には世界を変えたいと願っている男女なので。もっと達成したい目標があって叶えたい夢があって、それに向けてある意味ではまたここから一歩踏み出していくという、今はそのスタートラインにもなっています。この後二人は街を抜け出して、「あの街」ではない「別の街」に冒険して行くことになるので、これまでのヨルマチのメッセージは根底に持ちつつも、「別の街」でしか得られない新しい風を吹かせられないかなという構想が自分の中にはあります。メッセージなり、サウンド面なり、もしかしたら活動スタイルなり、第一章とは一味違う新しいヨルマチを見せられないかなと思って、今頑張っているところです。

例えば、男性アーティストとのコラボも考えていたりするのでしょうか?

もちろんです(笑)。音楽性としても、今までやっていなかったようなジャンルにもチャレンジしようと思っています。

新たな展開が期待できそうですね!

もっと色んな音楽性を求めて、もっといい音楽を作って、わざわざ時間を割いてライブに来てくださる方達と一緒に、是非とも新しい世界まで行きたいと強く思っています。「連れていくぜ!」って気持ちで頑張っています!!

SNSやファンの方からの言葉で印象的だったものはありますか?

とにかく曲のコメントはすっごく刺さりますね。『この曲で励まされた』とか、ノラとレイラと同じように曲を聴いて前を向いてくれる方が意外といるんですよ。『すごく落ち込んで病んでいた時に「ロストチャイルド」に出会いました』という方がいたんですけど、この曲は“誰にも理解されない、それが苦しい”って歌っているんです。でも、この曲を聴いて共感してくれる人がいたってことは、誰かに理解されたわけじゃないですか。それってある意味、曲のアンサーをリスナーからもらっているんですよ。この双方向な関係を通じて、僕はめちゃくちゃ影響されていますし、とても励まされています。リスナーの皆さんにとっても、僕の音楽がいい影響を与えられていたらいいなって、もうそのために曲を書いてると言ってしまえるくらい皆さんの反応は大きいです。

ヨルマチを愛聴される方は、ノラとレイラが一緒に成長したり、寄り添ってくれることで自分も頑張っていけるという方が多いのかもしれないですね。

僕はリスナーさんとは「仲間」でありたいんですよ。ライブで配布した小説を読んでくださった方には分かると思うんですけど、いわゆる「黒猫*」が見える人たちの仲間、レジスタンスみたいな。僕も一人でどんどん進んでいける人間じゃないので、助けてもらいながら仲間になれたらいいなと思っています。
※ノラだけに見える黒猫がレイラにも見えるというストーリー設定があり、それが二人の出会いのきっかけとなってる。

「閉塞感」を感じながら日々過ごしている同世代の方って多いのでしょうか?

多いと思いますね。大人になるにつれて考え方も変わってくるし、これは僕ら世代共通の感情なのかもしれないですけど、なんとなく最近色んな物事の正解が崩れ始めているとも思うんですよ。そういう意味では、ある意味時代の流れの影響も受けているのかもしれないですね。もっと大人になった時にどう感じるかは分からないけど、悩んだり、抗ったりする時間はとてもかけがえのない、大切にしたいものだと思っています。

ライブのこと、2024年のこと

今後のライブ活動についてはいかがですか?

ライブで歌唱するノラ
ライブで歌唱するノラ

ヨルマチのライブは物語を追っかけつつになりますけど、普通のライブもしたいんですよ。ユニットでもソロでも。コンセプトで固めた舞台のような静かに観るライブだけじゃなくて、できることならカバーもしていきたいですし、ヨルマチであっても世界観に縛られないライブは今後やってみたいですね。例えばDJやったり、バンドでやったり、色々なチャレンジをしていきたいです。

では、2024年はどんな一年にしたいですか?

できる、できないは一回置かせておいて、やっぱりライブがしたいです。フェスとかも出たいですし。ネット発ユニットで、インターネットで活動していって、その良さもすごくあるし大好きな文化ではあるんですけど、やっぱりライブってまた違う特別なものだと思うんですよね。なので、来年の目標はライブをする! それからセカンドシーズン(第二章)に入っていくので、新しい風を吹かせる! めざせ革新! 自分が作ってきた殻をあえて割る一年にしたいと思っています!!

最後にパーソナルな質問

では、最後にパーソナルな質問を3つ! 1つ目は、「ノラさんにとって、これだけは許せない!ということはなんですか?」

ズル!ズルイ人は嫌いです。『完全に真っ直ぐであれ』とは思わないし、自分もどうかって言われるとそうじゃない所もきっとあると思うけど、『ズルはダメでしょ!』って思います。

2つ目は、「今100万円が手に入ったら、どうしますか?」

機材に突っ込みます! 防音室を買いますね。僕、自作の防音室で歌ってるんですよ。ホームセンターで木材買ってきて、自分で柱立てて電話ボックスみたいな箱作ってその中で歌っているんですけど、天井も低いし、やっぱり狭い空間で録ってる音って狭い音がするんですね。完全に響きがないし、狭いから低音ばっかり響いちゃって。ヨルマチが第二章は開放的になっていくので、もっと開放的な所で歌いたい気持ちはありますね。

では最後に、「10年後のビジョンは?」

10年後!34歳!もう〜そうなると相当大人ですけど、音楽はしていたいし、年相応にちょっと渋い音楽をしていたいです。そして、積み上げてきたものを感じさせるような、成熟したオーラのある人間になりたいです。

成熟したオーラのある人間というのが、憧れの男性像ですか?

そうですね。今の自分はフワフワしているので(笑)。大人のオーラを纏える男になっていたいです。